『小武寺木造薬師如来立像(おだけじもくぞうやくしにょらいりゅうぞう)』
県指定年月日:1959年3月20日
《彫刻/県指定有形文化財/小武寺》
天仲山(てんちゅうざん)(天住山)小武寺は、平安時代の天慶(てんぎょう)五年(942)に空也上人(くうやしょうにん)によって開基されたと伝えられる古刹(こさつ)で、境内(けいだい)には倶利伽羅竜剣(くりからりゅうけん)(国指定)をはじめとする貴重な文化財が大切に保管されています。江戸後期に編纂(へんさん)された『豊後国志(ぶんごこくし)』によれば「山香郷小武村に在り、天仲山(天住山)と号す、亦空也創所、元亀(げんき)中(1570~1573)大友の臣徳永親宣(とくながちかのぶ)重ねて之を修す、寺中に山王祠あり…」とあり、日出藩の地誌録である『図跡考(ずせきこう)』にも同様の記述が伝わっています。また、当初本尊は薬師如来と大日如来の2像とされていましたが、大友宗麟(おおともそうりん)の時代に焼き討ちに遭い、薬師如来は近くの谷に隠されて難を逃れたものの、大日如来については所在不明となっています。
小武寺に現存する薬師如来立像は、桧(ひのき)材を用いた一木造りの古い造像法で制作されており、流麗・優美な立ち姿(総高:203cm)に穏やかな面貌(めんぼう)表現となっています。内部は内刳(うちぐ)りと呼ばれる(刳(く)り貫(ぬ)き、空洞化する)技法が施されています。台座は蓮華座(れんげざ)と框座(かまちざ)からなり、光背(こうはい)は輪光(りんこう)が施されていますが、台座・光背はいずれも江戸時代前後頃の補作と考えられています。左手に持つ薬壺(やっこ)はあらゆる病気へのご利益があるとされ、病気平癒(へいゆ)を象徴する仏様として国東半島では古くから人々の信仰を集めてきました。