■壕から出土 なぞのレコード
南風原町教育委員会では、2018?2019年度にかけて、与那原バイパス工事区域で発見された戦争遺跡の発掘調査を行いました。調査は地元でグスクヌチジと呼称される丘で行い、日本軍が使用した壕や通路跡などを発見しました。
この調査の中で、1箇所の壕よりレコード盤を計17枚発見しています。残念ながらひび割れ等で再生することは難しい状態ですが、一部のレコード盤から演者に関する表記が読み取れましたので、ご紹介いたします。□は読み取れない文字を表し、カッコ書きは若干読み取れた推定の文字になります。
(1)「□ 喜屋武 盛朝」「琴 新垣 かめ子」
(2)「歌三味線□(數)松雄」「囃子 多□良朝成」
以上の表記の内、(1)の喜屋武盛朝は、野村流の大家である桑江良眞の高弟、照屋孚展に師事し、昭和10年には那覇市長に随行して鹿児島で沖縄芸能の紹介にも努めた方です。ご一門の方は、吹き込みされたレコードの存在を初めて知って驚かれていました。次に(2)の「囃子 多□良朝成」は多嘉良朝成のことを指すとみられます。氏は役者・音楽家として活躍し、1916(大正5)年の琉球新報主催の俳優人気投票で20人中1位になった人気俳優であり、沖縄芝居の向上に大きな役割を果たした方です。
以上の表記から、琉球音楽を収録したレコードが含まれることが分かりましたが、なぜ日本軍が使用した壕の中から見つかったのでしょうか?異国情緒あふれる音楽として楽しんだのか、住民が家財を隠した壕を軍が使用したのか、様々なことが想像できますが詳細は不明です。
今後も引き続き、どのような演者・曲目が関係するレコードがあるのか、再生する方法がないのか調査を行いたいと思います。